国際茶の湯団体 茶柳会 ×国際交流基金リマの共催でペルー茶の湯講演を開催(協力:ペルー日系人協会)

日本の裏側にも「茶の湯」の文化を伝えたい!

2024年10月に茶柳会代表の砂川が国際交流基金の招聘でペルーに渡り、世界最大規模の日系人協会の拠点となる首都リマと、南米一の美食の町として知られるアレキパで、抹茶と茶の湯の文化を伝えることを目的とした講演会を開催しました。

ペルーの首都リマにある日系人協会での講演参加者の皆様

この記事では開催地となったペルーについてや、協力いただいたリマのペルー日系人協会や講演会の様子、ペルー人の参加者の方々の反応などをまとめました。

ペルーってどんな国?

ペルーはほぼ日本の真裏側である南米に位置する国で、アンデス山脈やアマゾンといった大規模な自然、マチュピチュなどの世界遺産が広く知られています。太平洋側に面しており海産物も豊かで南米諸国の中では珍しく魚を食す文化が根付いているそう。また日系人の人口が多く、親日家の方も多いのが特徴です。

ペルーは南米5か国(エクアドル、コロンビア、 ブラジル、 ボリビア、 チリ)と隣接する国

世界遺産マチュピチュ、レインボーマウンテンと呼ばれるアンデス山脈の絶景

インカ文明の影響が色濃く残っていて、アルパカの毛を使った民芸品なども有名

開催地リマの日系人協会がすごい!

今回、現地に足を運んでまず驚いたのは日系人協会の施設がとても立派な建物だったことです。以前砂川が見た他国の日系人協会では小さな平屋というところもあったのですが、リマの協会は8階建ての大きなビルでした!

(左)ペルー日系人協会「友愛」の石碑、(中)講演のポスター、(右)ペルー日系人協会のビル

なぜこのような施設を維持できるのか伺ったところ、協会設立者が協会のすぐ隣に日本の医療器具を揃えた国内最先端の医療を受けられる病院を建設し、そこで得た利益の一部を資金とすることで協会を維持されているのだそう。このような先人達の先見の明の上に日系人コミュニティが存続し、日本文化を継承しようとする日系人の方々の志によって成り立っているのです。

ペルー日系人協会ではおにぎりや納豆などの日本食や、日本のお菓子などが販売されていました

さらに驚いたのは、ペルー日系人の方は4世、5世くらいの方でも日本語を話せる方がいたり、私たちが普段目にするような日本食が協会内であたりまえのように販売されているのを目にすることができたことです。移民ががペルーに渡って90年以上経っていても、これだけ日本文化が継承されていることに改めて驚きました。

ペルーに茶室!?

ペルー日系人協会内の茶室。ここだけ見ると日本の裏側とは信じられない。

なんとこの立派な茶室もペルー日系人協会の中の施設なのです。日本文化の継承に本当に力を入れていることがうかがえます。他にも弓道場や日本庭園などもあるそう。

中にはペルーの土や顔料、模様を使った茶碗もある

茶道の道具は日本と同じようなものが用いられていましたが、茶碗は日本の伝統的なもののほかに、ペルーの土や顔料を使用して現地の植物や動物を用いた幾何学模様の柄を施した茶碗なども使われていて、日本の文化の中に現地の文化が融合しているのも印象深いところでした。

ペルー在住の日系人の方のお点前を見学

実際に現地の方が茶室を利用しているところを見せていただきました。日本人が茶道をするのと同じような所作で行われていて、日本文化への愛着が感じられました。

日本とペルーのお茶文化の違いと共通点?

実際の講演会の資料 日本語とスペイン語で説明を書いています

実際の講演では日本のお茶の文化を説明したあと、よりペルー現地の参加者の方に興味をもっていただくために日本とペルーのお茶の文化の比較をしてみました。

ペルーで欠かせないコカ茶についての資料

ペルーで伝統的に飲まれているコカ茶は、アンデス山脈の高地に自生するコカの葉から作られ、コカの葉を数枚に熱湯を注いで色がでたら飲みます。標高が地域が多いペルーではコカ茶は高山病の予防や疲労回復に効果があるとされ、現地の生活になくてはならないお茶として愛飲されています。

「精神を整える、人をもてなす」といった目に見えない部分が共通点

日本でも元々抹茶は仏教の僧侶が悟りを開くために夜通し祈りを捧げる。彼らを覚醒させるための『薬』として使われていました。一方コカ茶もシャーマンが神との交信を行うための薬として使われています。どちらも神や仏などの上位存在に繋がりを持つための媒介として使われているという共通点があるのです。こう考えると地球の裏側の遠い国の茶文化が少し身近に感じられるような気がしますね!

日本とアメリカの抹茶を飲み比べ!

左が日本の抹茶、右がアメリカの抹茶

講演では現地の参加者に方に2種類の抹茶を飲み比べていただきました。ひとつめは日本の伝統的な抹茶(左)、ふたつめはアメリカの抹茶(右)です。粉末の状態でも緑の鮮やかさが違うことがわかりますね。アメリカの抹茶は煎茶を粉末にしたものなので日本でいうところの粉末茶というのが抹茶として販売されているよう。

(左)日本の抹茶とアメリカの抹茶の説明をする砂川孔明 (右)試飲に興味を示す参加者

産地の違いなどを説明しながら参加者の方に試飲をおくばりして実食していただいたところ、しっかりと味の違いを感じ取っていただけたようです!

日本文化レクデモ抹茶応援会アンケート結果

『茶の湯をもっと自由に、もっと日常に』

(左)砂川孔明登壇の様子 (右)講演のお声がけやご協力いただいたペルー日系人協会の方々

初めの渡航から90年にわたりペルー日系人協会の人々により日本文化や茶道の文化が継承されているこの地で、ペルーの茶文化と日本の茶文化の違いと共通点を語らせていただいたり、抹茶の飲み比べをしてもらった入りする中で、より抹茶に親しみをもってもらい、カジュアルに抹茶を楽しんでいただける「茶の湯」の文化を伝えられたのではと思います。

開催後アンケートから得られた反響

日本文化レクデモ抹茶応援会アンケート結果

講演後のアンケートでは好評をいただき、この講演をきっかけにさらに日本文化や日本への興味が高まったことがわかり、開催させていただいて本当に良かったなと思います。

講演会への参加のきっかけは?

抹茶専門家である砂川孔明氏に直接会えるから 38.4%

日本文化レクデモ抹茶応援会アンケート結果(複数回答、1%以下の回答省略)

ペルーでの講演へは、みなさん様々な理由で参加してくださいました。抹茶や日本文化への興味関心の高さも目を引くところですが、無料イベントということや通りがかりなどでカジュアルに参加をされた方も多かった点も、この日系人協会の強固なコミュニティがあるペルーならではなのかなと感じられました。

ペルーでも受け入れられた「茶の湯」の文化

今回の講演から日本文化に興味を持つ外国の方からも大きな支持を得た「茶の湯」の文化。茶道は興味があるけれど道具やお作法が難しそうでハードルが高いと感じていたり、なにか手軽に日本文化に触れられるようなことにチャレンジしたいと思っていたりするあなたへ、ぜひカジュアルに抹茶を楽しむ「茶の湯」の文化を日常に取り入れてみませんか?

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